解説
BULLET BALLET バレット・バレエ1998年/35mm/モノクロ/98分
(C) 1998 塚本晋也 海獣シアター代表作である『鉄男』『鉄男』に続き『東京フィスト』も世界各国で絶賛され、'97年にはベネチア国際映画祭で審査員に抜てきされるなど、世界での評価は不動のものとなった感のある塚本晋也。
一貫して都市と肉体にこだわり続ける塚本が今回選んだモチーフは“拳銃”。'89年の『鉄男』以来久々のモノクロ作品で、都市・肉体そして拳銃を塚本晋也独特の視点で描く。望遠レンズを多用したその映像は今までの塚本作品とはひと味違った臨場感を生み、特に中盤の山場である対立する若者グループ約20名による乱闘シーンなどは都内の某繁華街の中心地で撮影されパワフルかつ臨場感あふれる仕上がりとなっている。
主演の中年男性合田には、役者としての顔も定着してきた塚本晋也本人。ヒロイン・千里には『学校』(山田洋次監督)で役者デビューを果たし、ピーター・グリーナウェイ監督の新作への出演も決まり活躍の場を国際的に広げつつある、真野きりな。若者グループは300人を越すオーディションにより10数名が選出されたが中でも主役の後藤を射止めたのは注目の新人、村瀬貴洋。若者不良グループのカリスマ的存在・出射(いでい)を人気ロックバンド、ブランキー・ジェット・シティのドラマー・中村達也が演じ、映画初出演とは思えぬ存在感で本作品を彩っている。また、鈴木京香、井川比佐志らがきっちりと脇を固める中、映画監督・井筒和幸の個性あふれる演技も見逃せない。前作『東京フィスト』で衝撃のデビューを飾り、キネマ旬報新人男優賞に輝いた塚本晋也監督の実弟でもある塚本耕司、今や日本映画に欠かせぬ役者といっても過言ではない田口トモロヲら塚本組の常連たちの新たな役どころも本作品の見所となっている。
音楽はもちろん、塚本映画には欠かせぬ存在となっている石川忠。更に爆走するインダストリアルサウンドに、乾いたニューヨークテイストが加わり、石川サウンドも新たな側面への展開を見せている。現在、映画公開に先行する形でサウンドトラックのリリースが準備されている。
ストーリー拳銃による自殺で10年間つきあっていた恋人・桐子(鈴木京香)に突然先立たれた合田(塚本晋也)。
その事件をきっかけに合田は“死”とその要因となった“拳銃”に傾斜しはじめる。 泥酔し街をさまよっているとふと路地裏が気にかかり足を止める。そこには、以前からまれた事のある不良グループの一員である少女、千里(真野きりな)が立っていた。からまれた時のけがの事で文句をつけるが、後藤(村瀬貴洋)以下5人のメンバーに囲まれて殴りとばされ、さらに彼らがいつもたむろしているクラブにまとまった金を持ってくるよう脅されてしまう。恋人を失い壊れ始めた生活の中で合田は、彼らに復讐をすべく拳銃を求め街をさまよい始める。だがそう簡単に拳銃を手に入れることは出来ず、やむなく改造拳銃をつくりクラブになぐり込む。が、所詮素人の改造拳銃では破壊力がなく大したダメージを与えることもできず、またしても彼らの前に無力さをさらけ出してしまう合田であった。
そのクラブのオーナーでありカリスマ的リーダー出射(中村達也)は、彼らに“死”のゲームを楽しむ事をささやいている。後藤たちは暴力をゲームのような実体感のなさでしかとらえていない反面、いつかは就職し安定した生活をと考えるアンバランスな側面を持っていた。そんな中で千里はひたすら“死”へと傾斜して行く。
ある日合田は、後藤グループが対立する若者グループをつぶすべく抗争を計画しており、その戦いの中で千里は自らの死を覚悟していることを知る。そんなことは関係ないことだと自分に言い聞かせながらもなぜだか気がかりな合田は、今度こそ本物の拳銃を求めさらに街の闇の奥深くへと踏み込んで行くのだがやはり拳銃は手に入らない。いらだつ合田。なかばあきらめて自宅に帰ると、拳銃はひょんな事から合田の手に落ちる。拳銃を見つめ死んだ恋人を想い、合田は実体のつかめぬ自分の肉体を確かめるべくその拳銃を渾身の力で握りしめ若者同士の抗争が繰り広げられている深夜の街へ飛び出して行く……。
果てしなく“死”へ傾斜する千里に不思議なシンパシーを感じ始める合田、そんな合田にやがて千里も何かしらの共感を覚え始める。一丁の“拳銃”が合田を千里を、そして後藤を死の淵へと追いつめ、ついに壮絶なクライマックスへと導いて行く…キャスト塚本 晋也
真野 きりな
中村 達也(ブランキー・ジェット・シティ)
村瀬 貴洋田口 トモロヲ
井筒 和幸
鈴木 京香
井川 比佐志スタッフ監督
脚本
撮影監督
美術監督
編集 塚本 晋也音楽 石川 忠
撮影・照明 塚本 晋也
天満 眞也助監督 川原 伸一
大谷 清英